安城市歴史博物館の施設を紹介します。
安城市歴史博物館で一番有名な収蔵品「人面文壺形土器」。平成28年(2016)、国指定重要文化財に指定されました。
ここでは、この土器とその関連資料を紹介しています。
この土器は昭和52年(1977)に安城市東町の亀塚遺跡から出土しました。しかし発掘調査の時点では土まみれの破片で、そこに絵が描かれていることには誰も気がつきませんでした。人の顔が描かれているとわかったのは、もちかえった土器の破片を洗って整理している時のことでした。
描かれている絵はとてもはっきりとしたもので、ややたて長の丸い輪郭の中に、目や鼻、耳がそれらしい位置にしっかりと描かれているため、人の顔とすぐにわかります。また、目の上下から頬にかけて多くの線が描かれています。
亀塚遺跡の出土品は、その形などから弥生時代の終わり頃のものと判断できます。ちょうどこのころの日本の様子を記したのが有名な『魏志倭人伝』という中国の記録です。この中に倭人(このころの日本列島の住民は中国からはこのように呼ばれていた)の男子は顔や体に入れ墨をしているとされています。このことから、この壺の顔は、『魏志倭人伝』に記された倭人の顔を描いている、と考えられるようになりました。
人面文壺形土器が全国に知られるようになると、すぐによく似た顔の例があることがわかりました。岡山県総社市の一倉遺跡から出土した土器の顔です。また、安城市内でも上条町で中学生が採集した土器などのなかに、同様の顔の表現がある土製の球があることも報告されました。さらに香川県善通寺市の仙遊遺跡で出土した石棺に、たくさんの線にまじって、亀塚遺跡から出土したものとほとんど同じ顔を描いたものも見つかりました。